【背景技術】の記載の留意点

特許

【背景技術】の記載の留意点

簡潔に書く

下記審査基準にあるように、背景技術の欄に記載された発明は、公知な発明であると出願人が認めたものと解釈されて特許性(新規性進歩性)が判断されるおそれがあります。

(4) 審査官は、本願の明細書中に本願出願前の従来技術として記載されている技術について、出願人がその明細書の中でその従来技術の公知性を認めている場合は、出願当時の技術水準を構成するものとして、これを引用発明とすることができる。

審査基準 第 III 部 第 2 章 第 2 節 進歩性 3.3 (4)

そのため、背景技術で多くの技術を長々と記載すると、公知の発明が増える可能性があります。
【背景技術】の欄は、次の【発明が解決しようとする課題】を記載するために必要な最低限の事項のみを可能な限り短く記載する(理解が可能であれば1文等でOK)ことが好ましいです。

なるべく図面は使わない

前述のように、背景技術に記載の技術内容は、公知なものとして扱われます。
そのため、背景技術において情報量の多い図面を用いると、公知となる範囲が格段に広がります。
どうしても図面を使いたい場合は、【背景技術】の欄ではなく、【発明が解決しようとする課題】の欄の説明において使用することが良いかと思います。

PL法(製造物責任法)

これは背景技術の欄に限ったことではありませんが、「安全性の問題がある」「危険である」「爆発するおそれがある」等のような内容を記載した場合、このような危険性を認識していたものと判断され、PL法の責任に問われる可能性があります。
そのため、このような内容は、危険性とは異なる言い方にするか、思い切って省略する必要があります。

先行技術文献は1つにする

EP(欧州特許)の実務を考慮したものです。
日本出願の段階において先行技術文献を複数記載した場合であっても、日本出願を基にEP出願した場合は、EP出願の審査段階において先行技術文献は最も関連性の高い1つの文献に修正されます。
EP出願を予定していない場合であっても、後々方針が変わり、EP出願することもよくあるので、日本出願の段階から意識しておいた方が良いです。
ただ、どうしても先行技術文献を複数とした方がわかりやすい場合などは、複数でも構わないかと思います。

特許公報ではなく特許公開公報を記載する

特許公開公報は、出願から1年6ヶ月後に自動的に公開されるものであり、特許公報は、特許後に公開される公報です。
特許公開公報は、概ね、出願当初の明細書等の内容で公開されます。
一方、特許公報は、特許公開公報よりも内容が減っていることがあります。
すなわち、特許公報は、審査を経て特許になった後の内容が記載された公報であり、審査段階の補正により、内容が当初よりも減っていることがあります。
※補正は出願当初の明細書等に記載された範囲内でしかできないので、明細書の補正があると内容が減ることがあります。
そのため、特許公開公報には記載があるが、特許公報には記載がない技術も生じます。
より広い範囲の内容が記載された特許公開公報を出願人がきちんとチェックしていることを明らかにするために、特許公報ではなく特許公開公報の方を記載した方がベターです。
早期審査等により、特許公開公報が出る前に特許査定になった場合は、特許公開公報が発行されず、特許公報しか発行されない場合がありますが、この場合は特許公報でOKです。

今回は以上です。
以上のような内容に注意しつつ、背景技術の欄を記載すれば良い背景技術の記載になるかと思います。

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