明細書における発明の効果の記載について【外国出願も考慮】

特許

明細書における発明の効果の記載について【外国出願も考慮】

※日本出願バージョンは、明細書における発明の効果の記載について【日本の場合】に記載していますので、こちらを先にご覧いただくとスムーズかと思います。

米国

権利範囲

原則として、米国の裁判所は、明細書を参酌してクレームを限定解釈することはありません。しかし、「本発明の効果」、「本発明の利点」などのような表現が明細書に含まれている場合、特許発明の範囲を限定するものとして解釈されます。

進歩性

米国においても、日本と同様、非自明性を判断するにあたり、発明の効果が参酌されます。また、米国においても、明細書に記載のない作用効果を後に主張することも可能ですが、明細書に記載しておくことで、進歩性主張の説得力が高まります。

結論

米国においては、権利範囲が限定解釈されるような記載の仕方を避けつつ、なるべく明細書中に効果を記載することが好ましいと考えます。

欧州(ドイツ)

権利範囲

ドイツにおいても、原則、明細書を参酌してクレームを限定解釈することはありません。しかし、クレームの構成要素の解釈を、明細書の記載に委ねているように見えれば、クレームの構成要素の解釈が限定解釈される恐れがあります。

進歩性

ドイツにおいては、発明の効果が認められない場合は進歩性なしと判断される可能性が高いようです。発明の効果は一般に明細書中に記載されていることがベストですが、明細書中に記載がなくても大丈夫のようです。

結論

ドイツにおいては、明細書中になるべく効果を記載することが好ましいと考えます。

中国

権利範囲

侵害訴訟において請求項の範囲を判断するにあたり、必要であれば、発明の効果を考慮に入れます(中国特許法56条)。明細書において、全体の発明の効果として記載した場合は、請求項を限定するものと解釈される一方、一実施例の効果として記載した場合は、その一実施例の効果として判断され、請求項を限定するものとして解釈されにくいようです。発明の効果は、構成と一対一対応で記載することにより、発明の効果の記載が請求項の範囲が限定されることを防止しやすいようです。

進歩性

発明の効果は、進歩性の存在を推認する際に参酌されます。明細書中に効果の詳しい記載がない場合、構成のみから効果を推認することができる、との主張は可能ですが、認められない場合もあるため、効果は記載していることが好ましいです。

結論

米国の場合と同様、権利範囲が限定解釈されるような記載の仕方を避けつつ、なるべく明細書中に効果を記載することが好ましいと考えます。

全体の結論

以上から、これらの国及び日本の実務を総合的に考えると、権利範囲が限定解釈されるような記載の仕方を避けつつ、なるべく明細書中に効果を記載することが好ましいと考えます。例えば、【発明の効果】の欄では最小限の記載に抑え、実施形態、実施例において構成とセットで効果を記載すると、外国出願にも対応可能な明細書を作成しやすいかと考えます。

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